こころ・心理学・ユング

親になって知ったことは、親のありがたみより子のありがたみだった

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40歳になる年に初めて親になり、生後半年のこどもを連れて、日本に里帰りしたときのこと、ホクオのことを小さい頃から知っているおじさんが、両親のいる前で、「これでホクオちゃんも、やっと親のありがたみがわかるようになっただろう。」と、目を細めて満足そうに言った。それまで、親不孝を重ねてきてホクオが、しおらしく「はい。」と、うなずくことが期待される瞬間だった。ところがホクオは、「いえ、それどころか、子のありがたみがよくわかりました。」と、きっぱり言ったので、その場は白けてしんと静まりかえった。

とくに日本では、親への恩や感謝の念が強調される風潮があり、それはそれでよくても、それが、「親に申し訳ない」という表現にもつながり、たとえば“ふつう”に生きていないことが、自分はよくても親に申し訳ないという言い方をして罪悪感をもつ人も少なくない。また、いくつになっても、意識的にしろ、無意識的にしろ「親を喜ばせるために」自分の人生のいろいろな選択をする人もいる。

ホクオは親になったとき、「こんなにかわいい生き物が、世の中にいたなんて!」と驚きながら、親のありがたみもさることながら、それよりも子のありがたみはもっと大きいことを知った。

だから、日々、ありがたく、幸せな気持ちでこどもの世話をしているかというと、それは、まったく別の話だ。ホクオが親になってはじめて知ったもうひとつのことは、よく言われる「こどもの寝顔はかわいい」という言葉の真相だった。こどもが起きている間は、きーっとなって、切れたり、切れそうだったり、とにかくイライラしっぱなしだったのが、こどもが寝ると、うそのように鎮まる。つまり、寝ている顔がかわいいというより、寝ているからかわいい、そういうことだったのだ!

そんないくつかの、ホクオならではの気づきの一方で、「本当に、よく話に聞いていたとおりだな。」と改めて納得することもある。子育てが楽しかろうが苦しかろうが、とにかく「こどもは、あっという間に大きくなる。」ということ、それは、うれしくてさびしい普遍の真実なのだろう。

※この記事の内容は、3年前、息子が小学1年生だった時、2014年ストックホルム日本人会会報秋号に掲載されたものだが、上の4コマ漫画は、今でもよく思い出している。

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