こころ・心理学・ユング

ワイドショーに見るスケープゴートの深層心理学:人の心に潜む影

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当ブログ内で中田俊行氏について書いたことがある。インターネットで買いものをした会社の社長で、買い物以来、自動的に届くようになったメルマガが面白い。いいこと言うなぁと思いながら、保存している話も溜まっているのだが、今日届いたものはとくに秀逸だったので、To Do Listはそっちのけで、これを書いている。

ホクオの書きたいハートに火をつけてくれた、そのメルマガの紹介から始めて、この記事は、そのあとスケープゴートや影などユング心理学の話が続く。

中田俊行のメルマガ「ワイドショーを見るな」

海外から帰ってきて、空港近くの回転寿司に行った時のこと。
店内のテレビでお昼のワイドショーがやっていたんですが、
有名人のスキャンダルでワーワーやっていたわけですね。

日本を離れていたということもあって
余計に違和感を覚えた記憶があります。

いつも思うんですが、
正義感の強い人って怖いんですよね。

正義を振りかざす時の顔が
ものすごい威圧的な顔だからです。
人を攻撃する時の顔です。

なぜこのようなどうでもいいことに怒れるのか。
理由は1つしかありません。

日頃から抱えているストレスなわけです。

自分も色んな所で欲望を抑えているから、
ルールを逸脱する他者を許せないわけです。

もちろん、生きていれば
大なり小なり、何かしらストレスはあるものです。

でも、「怒り」は抱えた瞬間、負けです。

特定の誰かを攻撃すれば
どういう結果になってもむなしいものです。

そもそも人にはみんな
それぞれに自分に大事な使命があるわけです。

誰かを攻撃するということは、
自分の道を歩むことをストップするということです。

これだけ他人のスキャンダルが賑わうのは
自分の道を歩いている人がそれだけ少ない証です。

夢中になれる、没頭できるものがないから
周りが気になるわけですね。

それはつまり、仕事にも没頭できていないということなので、
お金は当然ながら遠ざかっていく行為なわけです。

もう1つ言うと、
これって、大人の集団リンチと同じなので、
子供のいじめとも同類の行為なわけです。

いじめてる子供ってカッコよくないじゃないですか。
ドロっとした陰湿さを感じますよね。

ゴシップネタを見て、攻撃してる人は
そういうことなわけです。

周りのことよりもまず自分。
自分が何をしたいのか。どうなりたいのか。

自分と真摯に向き合って、
自分の魂が真に欲していることを
徹底してやることが大事です。

複雑化した社会では複雑に物事を考える人が多いですが、
欲望というものはもっともっとシンプルなものなわけです。

欲望を満たすためには
お金が必要だから、仕事を頑張る。

そして、仕事を通じて、
自らの基礎を作り、達成感を感じる。

そこにゴシップネタが入る余地はありません。
周りのことなど気にならないのですから。

逆に、ゴシップネタにどっぷり浸かっている人は
自分が満たされていないということですね。

(2017年9月17日配信の中田俊行氏のメルマガ全文を掲載)

増加する不倫報道の数

最近では斉藤由貴や衆院議員の山尾志桜里、遡っていくと、ベッキーや乙武洋匡など、不倫騒動がある度に、日本在住のお客さんたちから「なんだかねー。」という静かな声を聞く。

そんなどうでもいい話題で騒いでいるマスコミや世間に違和感を覚えるだけでなく、自分が責められているわけでもないのに「こわい」というのがその「なんだかねー。」に含まれている。

持ち上げる時には、持ち上げられるだけ持ち上げておきながら、落とす時には、一気に叩きのめす。その執拗なまでの叩き方には、「どろっとした陰湿さ」があり、第三者も恐怖を覚える感じは、「集団リンチ」という言葉の響きがもつ怖さに通じる。

朝日新聞デジタルニュースによると、「週刊誌のスクープなどをきっかけにテレビやネットで取り上げられ、謝罪を迫られるパターン」の不倫報道は、最近、特に目立つそうだ。

いつの世にも不倫はあり、古今東西の文学の題材にもなってきた。だが、メディアコンサルタントの境治さんは「それにしても、いまの報道の過熱ぶりは異常だ」とみる。

民放の在京キー局が、不倫報道にどれだけ時間を割いているかをデータ会社に依頼して調べたところ、2014年、15年は30時間未満だったのに、16年に170時間に急増、今年は8月27日までで120時間に上り、「この2年の突出ぶりが際立つ」という。

要因の一つはネットとテレビの相乗効果だ。週刊誌がネットで不倫報道を予告するパターンが始まり、ある民放キー局幹部は、「世の中の一大事のように報じるのはどうかと思う。だが、制作現場にとって、ネット上の反応が世間の関心事のバロメーターになっている。ネットが盛り上がると、テレビでも取り上げやすくなる」と語る。

出典:2017年9月8日付け朝日新聞デジタル

そもそも、不倫して、なぜ世間に謝罪しなければいけないのかもよくわからないが、中田俊行氏の言う通り、「正義を振りかざす時の顔は威圧的で、正義感の強い人って怖い」ので、とりあえず謝るしかない空気になるのだろう。


(写真の出典:読売オンライン)

「不倫は文化」とヘラヘラしていた石田純一(1996年)のような態度もあっていいと思うが、その時には愛嬌で乗り切った彼も、次の不倫発覚時には世間に許されなかった。「不倫バッシング」によって、テレビの仕事でメインキャスターを降板することになった時(1998年)には、生放送で涙まで流して謝罪している。その後は「不遇の人生に転落」したそうだ。(ウィキペディアより)

石田純一の場合は、結局、また出てきて、これを看板にさえしてヘラヘラできているし、ビートたけしや松田聖子は不倫バッシングに遭っても屈服しなかったが、並の人間はボコボコにされてしまう。

世間とマスコミの餌食にされるスケープゴート

不倫報道に限らず、ワイドショーで悪者にされ、槍玉に挙げられるタレントは、スケープゴートの役割を担っている。

もともと「身代わり」とか「生贄(いけにえ)」の意味合いを持つ、ヘブライ聖書由来の「贖罪(しょくざい)の山羊」が、宗教的な意味を離れて心理学用語としても使われるようになったのが、スケープゴート(scape goat)で、人が、自身の持つ不満や不快感を、無意識に他者に押しつける時、それを集団内で押し付けられた個人が、スケープゴートとなる。

簡単にいうと、

人が、欲求不満の状態にある。
 ↓
自分で欲求不満を解消することができない代わりに、周りに攻撃対象を見つけて攻撃することで、自分の不満を無意識的・間接的に解消しようとする。
(実際には解消されるはずもないが、一時的には忘れられる。)
 ↓
この作用は、集団内で同じ攻撃対象を見つけた時、より効果が高まる。
 ↓
攻撃対象となった人間は、「生贄のヤギ」となる。

インドの寺院で「いけにえのヤギ」を見たことがあるが、あえて血だらけになるような殺され方をして、儀式が終わった後も、境内には血痕が生々しく残り、血の匂いがしていた。派手にやられてこそ、捧げものの意味がある。

中田氏の言う「自分もいろんな所で欲望を抑えているから、ルールを逸脱する他者を許せない」気持ちの背後には、ルールを逸脱する他者を断じて許さないことによって、自分の不満足感を発散させようとする無意識的なメカニズムが働いているし、それが攻撃の本当の目的であるとすれば、執拗に叩くことの意味も納得できる。

たとえば暴行に遭っている被害者を助けるために悪者を殴る時、被害者が助かれば、それ以上に殴る必要はない。
しかし、「人助けをしているヒーローの自分に酔う」ために悪者を殴っていれば、被害者が助かった後も、もっと殴り続けるかもしれない。

スケープゴートを作る人格の影

分析心理学者のカール・ユングは、スケープゴートについて、以下のように述べている。

わたしたちが、スケープゴートを作る時、わたしたちは、自分自身の内にある、しかし否定しようとしている要素を、他人に投影する。この、自分の「影」といえる自分の要素は、無意識に隠したり、傷ついている人格の一部で、表に見せている自分と補完し合っているものである。

When we scapegoat, we project what is dark, shameful and denied about ourselves onto others. This “shadow” side of our personality, as Carl Jung called it, represents hidden or wounded aspects of ourselves, “the thing a person has no wish to be,” (Collected Works, Vol. 16) and acts in a complementary and often compensatory manner to our persona or public mask, “what oneself as well as others think one is.” (Collected Works, Vol. 9).

出典:Psychology Today(英語)

不倫なんてけしからんと真面目な顔で言いながら、その実、風俗に通っている人もいるだろう。

風俗なんて不潔だと言いながら、ポルノサイトで溢れたパソコンの中身を誰にも見せられない人もいるだろう。

こういう人が、自分の恥ずかしい部分を隠しながら、聖人君子づらをして「モラルに反する」と、鬼の首でも取ったように他人を攻撃するのは、「自分の影を他人に投影する」行為そのものでわかりやすい。

根底に無意識的な不満感があるという点では、「夢中になれる、没頭できるものがないから周りが気になる」人たちも同じで、そういう人たちが「正義を振りかざす」時に、本物の正義とは違う、「どろっとした陰湿さ」が加わってしまうのだろう。

「世の中の一大事のように報じるのはどうか」と思いつつも、それで視聴率が上がるから、売り上げが伸びるからという理由でそういう話題を取り上げざるを得ない人たちも、自分を欺いている後ろめたさが「影」になる。

「イケメン弁護士と『お泊まり禁断愛』」などの週刊誌のタイトルを、次から次へと日夜考えなければいけない敏腕編集者は、有名な出版社の社員という肩書きとともに日の当たるところにいられるから、誇りももっていられるのだろうか。それは、「オレがこんなにもデカくなった原因はコレ!!」(←今日のスパムメールボックスより)などのタイトルのスパムメールを大量発信するアンダーグラウンドの人たちのやっていることと、どれほど違うのだろうか。

「影」はすべての人間に存在している。「正義を振りかざして威圧的な態度に出る」ことなんて、ホクオなど大いに身に覚えがある。

以下は「影」と題されたアート。自戒も込めながら、自分の「影」に思いを巡らせてみたい。

Shadow by Rook Floro (2012)
出典:Saatchi Art / Publicity Photo

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