(2023-10-28 ケゾえもん記)
ラクゴニメというのは、録音しか残っていない五代目古今亭志ん生の落語に似顔絵で有名な山藤章二がアニメ動画を付けたものだ。ユーチューブで見られるから見てみるが良い。どうしたってこのぜんぜん写実的でない動画付きの方が録音だけ聞いているよりおもしろい。
私が合成させてまで動画にこだわるのはそういうことだ。
絶対動画付きの方が理解が深まる。
実は私の(お宝自慢と揶揄されるのを覚悟で)クラシックの合成もので大事なものが、朝比奈隆がシカゴ交響楽団を指揮してブルックナー5番を指揮したものがある。これはNHKがライブを放送したのでその録画もあるしDVDも発売されているけれど音が悪い。
実は私は朝比奈をおっかけてシカゴまで行ったので密かにDATで録音してきた。その音声とNHKの画像をドッキングさせたものを持っているがDVDの音声が悪いのに比較して私の録音のはシカゴ交響楽団(金管世界一のパワーと言われている)の迫力をちゃんと表現できている。
テレビ中継の音声は複数のマイクでとらえてそれをミキシングしているので、その過程でどうかすると音の鮮度がひどく落ちる場合があって、NHKでもそういうことがおこったと考えられる。
一方わたしの録音は靴下のすねのところにワンポイントステレオマイクをいれてそこに来る音をそのまま拾ったもので鮮度抜群なのである。これはしばしば経験することで、いつか話したがクライバーがウィーンフィルの定期演奏会で指揮した英雄の生涯を私が録音したものは、市販されているCDよりはるかに良い。
(胸ポケットだと心臓音がはいる。腰ポケットだとどうしてもがさがさする。足のすねのところが人体で一番動かない。ただし絶対足を動かしてはいけない。きびしいのだ)
ウィーンでクライバーが薔薇の騎士を指揮した市販媒体の録音が悪いのはミキシングでの不適当な作業があったのだと思う。そうでなければ1994年ではすでにデジタル録音の時代に入っており、一定のクォリティがある筈だ。つまり録音エンジニアがばかなのだ。
私は録音が悪い場合でも脳で補完するということがあるのは知っている。だけど、思いだして欲しい。私の場合、10月7日に三重唱を聞いてきて感激で胸いっぱい、記憶くっきりの状態でウィーンの録音を聞いて脳補完に失敗している。
おそらくクライバーの薔薇の騎士は特殊なのだ。なにか魔法を使っているのだ。その魔法が録音ではすっぽり抜け落ちるのだ。
オペラの数は多いし、ちゃんと聞こうと思ったらエネルギーがいるから20年聞かないオペラというのはいくつもある。
<20年聞いていないオペラ>
後宮からの脱出、パルシファル、トゥーランドット、マダムバタフライ、ファルスタッフ、さまよえるオランダ人、こうもり
思いつくまま書いたが、特別理由があって聞かないわけでない。聞かないでいつのまにか20年たったということだ。
<20年間のうちに聞いたオペラ>
オテロ、ボエーム、フィガロの結婚、コシファントゥッテ、ドンジョバンニ、魔笛、椿姫、トリスタン、ローエングリン
これらも特別好き(いや好きかな?)というわけでなく、ただ見てしまったというわけだ。
ところで薔薇の騎士であるが、私は20数年間聞いていない。精神分析をうけてみないと
本当のところはわからないと思うけど、どうやらこれはあの魔法の三重唱が録音では聞けない、比類ないものだとわかったショックというかトラウマというか、みたいなことで聞けないでいるのではないかと思われる。
ただしこれは意識してそうしたわけでない。「薔薇の騎士の録音なんか聞くものか」などと思ったことはない。しかし今考えると薔薇の騎士の録音には手が伸びなかった。今回このコラムを書きはじめて、はじめて封印をやぶりいろいろな薔薇の騎士を聞きだしている。
以下はフェイスブックなのでいつまでみれるかわからないがサイモン・ラトルが指揮してコンサート形式で薔薇の騎士三重唱を演奏している。ベルリンフィルでのジルベスターコンサートのものらしい。ここはスノッブになって言わせてもらうと、がんばればがんばるだけ、うるさいだけだね。ベルリンフィルもうるさい。
(ケゾえもん)
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