西洋人の家に泊めてもらうことになったら、持っていくお土産に頭を巡らせる前に、覚えておくべきマナーがある。「日本人が、気づかずやってしまうNGリスト」をまとめてみた。
10分以上の長時間シャワーはするな
日本人のシャワーは長い。西欧人の感覚からすると異常に長い。
学生の頃、初めて短期でアメリカに行った時、行く前の説明会で言われた注意事項の中に「ホストファミリー宅では、あんまり長々とシャワーをしてはいけない。」というのがあった。この注意事項は、もっと強調されるべきである。具体的には「10分以内が理想」と思って、それを目指せばちょうどいい。
日本人のシャワー時間は、男でも15分は当たり前、女なら30分かそれ以上シャワーをして、そのあとの身繕いを合わせると小一時間、浴室を独占することは珍しくない。
日本人客は、たいてい他人の家で迷惑をかけないように気を使いながら礼儀正しく行儀よく振る舞うので、自分たちにとって普通のこの習慣が、まさか西洋人ホストをイラつかせていたり奇異に思われているとは想像もしない。
西洋人家庭の一員として日本人客を迎えるときに、ホクオが一番、気を揉むのはこれだ。
日本からのお客さんには、浴槽にゆっくり浸かってもらえない分、せめてシャワーぐらい心ゆくまでゆっくりしてもらいたい。しかし、日本人は、1回のシャワーで、少なく見積もっても西洋人の10倍以上の水を使う。水道代を気にする西洋人は見たことないが、環境問題を気にする人は多いし、そもそも一軒家の場合、給湯器がそこまでの熱湯消費量に対応していないことも多い。
そんな物理的事情よりもっと面倒臭いのが、同居人との会話。
「あれ? お客さんどこ? え? まだシャワーだって!? 一体、あんな狭いところで何をやっているの???」
と少なからず驚かれ、日本人は時間がかかるのだと何度説明しても、不思議がられる。
日頃、日本の文化は素晴らしい!と言っている西洋人だが、文化差がないと思っているところの文化差に対しては一様に戸惑う。西洋人にとって、日本人の平均シャワー時間は、まるで潔癖性の障害を持っていて同じところを何度も洗わなくては気がすまない人並みの長さなのだ。
ヨーロッパに住み始めて、このことを理解した時、初めてヨーロッパ旅行をした時のことが瞬時に思い出された。
西洋人の友人宅に泊めてもらって、朝、いつものようにシャワーして身支度を整えてリビングルームに出て行ったとき、待ち構えていた友人と両親が、なんとも言えない困惑した表情でホクオを見たあの一瞬。
その時、彼らは何も言わなかったし、ホクオにはその表情の理由を想像することもできなかったが、違和感のある空気だけは感じ取ったので記憶にインプットされ、それから15年ほどのちに、彼らのあの当惑した表情の謎が解けた。
あの時みたいに、あんな目で見られたくない。その後、西洋人といっしょにいる時は、大急ぎで10分以内にシャワーを終わらせることを目指すようになった。薄くて少ない白人の髪に比べて、太くて多い髪を洗うだけでも時間がかかるが、身体は水をぐるっとかけて、洗ったか洗わないかで出来上がり。そのうち、とくに湿度の低い北ヨーロッパでは、それだけで十分だということにも気づいた。
すっかりそのやり方に慣れて、日本に帰った時もカラスの行水をやったところ、翌日、どこからともなく異臭がするので、鼻をクンクンやっていたら、その悪臭の元が自分のわきのしたにあったときには愕然としたが。
力のこもっていない握手はするな
日本人は、西洋文化の抱擁(ハグ)は照れくさいし、どうやったらいいかわからなくても、握手ぐらいは普通にできると思っている。
ところがどっこい、日本人の握手は、力が入っていなくてNGなことが多い。ふにゃふにゃっと触られると、気持ち悪いようだ。
握手をする時は、相手の目を睨みつけながら、握力検査をするぐらいがっちりやらないといけない。それでやっと「普通」にやっていることになる。
それを学習して、ガッチリ握手を始めたら、確かに、西洋人の握手は、相当な高齢者でもこちらの手が痛くなるほどガッツリなのに気づくはずだ。
スリッパですりすり歩きはするな
旅行にマイスリッパを持参する日本人は多い。スリッパの構造と、日本人の歩き方が相まって、多くの日本人は、床にスリッパを擦り付けて「すりすり歩き」をする。
このスリスリ音は、西洋人にとても評判が悪い。
ハイヒールのカツカツ音の方が、よっぽど大きい音なのだが、それはOKでもスリスリ音はNG。鳥肌が立つという人もいるので気をつけよう!
コーヒー、紅茶も音を立てて飲むな
うどんやラーメンはいいが、スープは音を立てて飲んではいけない食べ物であるということは、今では日本人の間でも常識となっている。
しかし、コーヒーや紅茶などの熱い飲み物を音を立てて飲む日本人はまだ多い。ホクオの父なんぞは、ズズズと熱いお茶の表面をすすって飲むと美味しさが増すと言って、ことさらに大きなズズズ音を立てた後「ハァーッ」と満足気に息を吐く。日本では気づかなかったが、西洋文化に慣れた後では、かなり耳障りである。
咳やくしゃみの時、手のひらで口を覆うな
西洋人は、首を曲げて肩に口を押し当てたり、着ている洋服を引っ張って服の中にで咳やくしゃみをする。数年前、東京の地下鉄で「手のひらではなく、肩の内側で口を押さえよう」という車内広告を見たが、実際には、あれはどのぐらい浸透しているのだろうか。
くしゃみや咳を、オホホ笑いの素手でカバーするという、周りの人を気遣っているはずのアジア式マナーは、西洋人には「ナンセンス!」「そのばい菌のついた手で、あちこち触るな〜!」としかめ面をされる。
ちなみに日本では普通のマスク姿は、こちらでは怪しく見える上、かなり目立つので、日本人観光客でもヨーロッパでマスクをかける勇気のある人を見たことがない。ヨーロッパ人にも、花粉症の人は結構いるが、目をしょぼつかせながら耐えている。
ついでに、鼻をかむ時は、鼻が取れるぐらいの勢いでブーンと大きな音を立てよう。遠慮がちに、音を立てないように鼻をティッシュで「ふく」のはかえって不自然。ましてや、素手でこすりとるなんていうのは、バッチぃと引かれること間違いない。
爪は人前で切るな
15年以上ヨーロッパに住んでいて、今日まで、このルールを知らなかった。
最近になってやっと自分で爪を切ることができるようになった息子に、爪を切るようにと、リビングルームに爪切りを持ってきて渡し、息子が爪を切り始めた時、同居人が「こんなところでするもんじゃない。浴室に行きなさい。」と言った。
「え? こんなところでやることじゃないって!? どこでやれってか?」
「だから、洗面所だってば。爪は排泄物の一種でしょうが。」
「知らなかった・・・。」
「アジア人は、平気で人前で爪を切って、切った爪が、ピシューンと飛び散ったりするんだよね。西洋人は、あの爪ミサイルにおののくんだよ。」
ホクオがアジア式の野蛮な習慣を持っていることは、自分の知ったことではないが、ヨーロッパ人である自分の息子がその野蛮な習慣を踏襲することは、もってのほかだということらしい。
人前で爪を切ることが、道端で痰を吐くようなそんな類のマナー違反だったとは!
ホクオだって、爪切りに関する「しつけ」はされた。父が「夜に爪を切ってはいけない」という迷信を大事にしていたので、夜は、父に隠れて切ったし、「爪は燃やしてはいけない」ので、切った爪の入ったティッシュを居間の紙くずカゴに捨てると「台所の生ゴミ捨てまでもって行け。」と怒られた。しかし、お客さんの前ならともかく、家族のいるところで、爪を切るのがマナー違反とは教えてもらっていない。他の日本人はどうなのだろうか。早速、聞いてみなくては。
おまけ:外国人へのお土産にもおすすめ、秀逸な日本の爪切り
日本の刃物は有名だが、爪切りも日本製に限る。ドイツのヘンケルスやゾーリンゲン社も有名で、いくつか買ってみたけどパッとしなかった。明らかに日本製に軍配が上がる。かさばらないし、外国人へのお土産にも喜ばれる。
自信満々でお勧めしたいホクオ愛用爪切りは、このふたつ。
石鎚金物の服部製クロム爪切り
この爪切りは、かれこれ20年ぐらい前に、大阪はミナミの戎橋筋商店街の橋の下にある小さな金物屋で買った。「よく切れる爪切りどれですか?」と聞いたら、おっちゃんが、これ、と迷わず出してくれた。
おっちゃんは、「全国から、ギター弾きがこの爪切りを求めてやって来る」と言い、ギターと爪切りの関連性がすぐにわからなかったホクオに、ギター弾きは、自分の爪をピック代わりに使うこともあるから、爪切りにこだわるんだと教えてくれた。
おっちゃんの言う通り、切れ味抜群のまま20年。プレゼント用にも買いたかったのに、今まではネットで見つけられずにいたが、今、探したらあった! しかも金の箱までついていて、プレゼントにぴったり。
匠の技ステンレス製高級つめきり
上の服部製が見つけられなかったとき、ネットの口コミを熟読の末、購入したもの。切れ味もいいし、大ぶりで使いやすい。形が凝っていて高級感があるので、外国人へのプレゼントにインパクトがあるのはこちら。サイズ的にも外国人好み。