ワシントンポストの内容をまとめた内容。2,000文字
ロックダウンしないまま現在に至るスウェーデンでは、ロックダウンしている近隣諸国に比べて、コロナによる死者が多いのにも関わらず、国家のコロナ政策に対する大衆の支持率が依然高い。そこには批判精神に欠けた盲目的で危険な愛国精神があるのではという意見がある。
2020年5月3日付ワシントンポスト、”The risk of Sweden’s coronavirus strategy? Blind patriotism.”の記事の内容を翻訳(意訳、部分訳)して紹介する。見出しはホクオによる。
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死者の数が増えているのに、政策支持率が高いのはなぜなのか?
合衆国内には、ロックダウンに反対する州がいくつかあるが、そのうちのひとつであるミネソタ州では、先週、「スウェーデンのようにやろう!(Be like Sweden!)」というスローガンが掲げられた。
合衆国やその他の国と違って、スウェーデンではロックダウンが行われておらず、免疫学の専門家たちは、スウェーデンのやり方を批判してきた。事実、4月30日のデータでは、スウェーデンはコロナウィルスによる死者の人口比が244と、世界のワースト10入りしており、この数字は、隣国のフィンランドやノルウェーの7倍にも及ぶのである。
スウェーデンの戦略は、年寄りを守ると言いながら、すでに老人施設では3分の2が感染しているし、1〜2万人の死者数も予測される。
それなのに、スウェーデン人たちが自国の政策を支持する率は高いばかりか増えているのは、なぜなのか。
スウェーデンのコロナ政策を率いる免疫学者が人気者に
スウェーデンの感染症対策の指揮をとっている疫学者のアンデシュ・テグネル(Anders Tegnell)は、今や英雄で、テグネルのマグカップやTシャツも販売されている。
(写真の出典:https://www.expressen.se/nyheter/coronaviruset/sa-hyllas-tegnell-med-tatueringar-och-trojor/)
テグネルのサポートグループとかファンクラブともいえるFacebookの登録メンバーは、実に10万人。人口1千万の国で相当な数といえる。最近のある調査によると、63パーセントという多数のスウェーデン人が国のコロナ政策を支持している。
他の北欧の国やカナダだって、ふだんは自国の制度を信頼している
このことを説明するのに、スウェーデンの権威者や学者たちは、スウェーデン人はお互いや国家を信用しているのだというが、それならデンマークやノルウェーやカナダだって同じなのに、それらの国は、コロナの脅威に対してスウェーデンのようにはしていない。
これは、スウェーデン人たちの愛国主義のダークサイドと呼べるものではないだろうか。今、コロナで「スウェーデンにはスウェーデンのやり方がある」と言っているスウェーデン人たちは、移民政策や国際協力を推し進めることも支持している。
国民アイデンティティの諸刃の刃
ある国の国民としてのアイデンティティは、ときには批判的な視点をもてれば、それは革新的、発展的に作用する最高のものとなりうるが、盲目的な忠誠心にもとづくものであれば、民主主義にとって極めて危険で最悪のものにもなりうる。自国に誇りを持つことはよいとばかりもいえない。批判的な目ももって初めて、バランスのとれた愛国精神と呼べる。
国に対する批判精神に乏しいスウェーデン人
ヨーロッパ、アメリカ、アジアおよび南アフリカ、合わせて33ヶ国を対象に行われた調査によると、スウェーデンは(よい意味での)批判的愛国心を持つ人の割合が最下位であった。「あなたの国が、あなたの国の欠点を改善したら、世界はもっとよくなると思う。」の項目に対し、「大いにそう思う。」と答えたスウェーデン人は6パーセントのみ。「まあそう思う。」を合わせると30パーセントとはいえ、この数値はハンガリーやロシアよりも低い。
コロナ対策での孤立感が、愛国心のダークサイドを増大させた
スウェーデンは、これまで高福祉や寛大な難民受け入れ、地球温暖化へのとりくみなどで、世界から好意的に評価されることが多かった。ところが、ここに来て、海外の専門家やメディアから、スウェーデンのコロナ対策にいっせいに批判を浴びた。
そうでなくてもウィルスと経済的危機の脅威にさらされている中で、世界から批判を受けるというこの状況が、スウェーデン人たちの愛国心を増大させ、一致団結させているのかもしれない。
平和なときには、自分たちの国が優っており、批判の対象になるとも思っていなかったところに、突然、敵意を向けられたところで攻撃的になるということもあるだろう。