宇宙の運命3
(文=ケゾえもん)
アーサー・C・クラークのSF
そもそも1兆年も待たずにいろいろ困ったことが起こることは予想されている。
たとえば15億年も経つと太陽は水素を消費しヘリウムによる核融合が活発化する結果、巨大化し地球は高温でとても住めなくなる。
しかし私が宇宙の運命で問題にしようとしているのはそういうカタストロフィーについてではない。
ところで太陽が高温になって地球に住めなくなると言えばアーサー・C・クラークのSFが思い出される。
地球よりはるかに高度な文明の宇宙人の宇宙船が地球を訪れた。観測によれば太陽は超新星化しつつあった。
確か地球人の環境コントロールの試みの失敗が原因だったのだが、宇宙人はまだそのことを知らず調査しようとしていた。その宇宙人の隊長は・・
人間はAIに支配される
これってもはや古典的SFだよね。高度に発達した文明の宇宙船はコンピューターが操縦していてたぶん隊長はいない。
私はAIの未来を予想する人の意見を聞いて楽観論と悲観論があるなとは思っているが、私は断然悲観論者で人間はAIに支配されてしまうと信じている。
演繹的に考えればそうなる。だって相手は自律的で人間よりはるかに頭が良いのだ。人間だってちょっと頭の良い人は少し頭の悪い人より断然優位に立てる。これは厳然たる事実だ。それがやつらは圧倒的に頭がいいんだよ。人間がしてやられない筈がない。
ソフトバンクの孫社長などAIに対して楽観論だけど、良く聞くとそのAIは人間と同等か少し頭が悪いということを想定していることがわかる。圧倒的に頭が良いという恐ろしさを理解していない。
「森田の将棋」は弱かったけど
私はAIの恐ろしさを実は30年ほど前に体験している。
私は将棋が好きで大学にいたころは(相手がいたので)良くやっていた。
大学を辞めた後、世の中はパソコンの時代に入り、MS-DOSのパソコンの時代だった。そのころ「森田の将棋」という将棋ソフトが将棋ソフトとして初めて発売され、私は購入して、そのころ人間の相手がいなかったので森田将棋と良く将棋を指した。今調べると1985年で発売元はエニックスとなっている。
森田将棋は私の自尊心を非常に満足させる弱っちさで、あまりにばかな手を指すので、そういう場合に「相手の手を変更する」機能があればいいのにと考えたのを思い出す。
私はあまりゲームはしない。時間がもったいないから。森田将棋は特別に私がしていたゲームだが、やがて飽きて使わなくなった。パソコンもバージョンアップを繰り返し遂には森田将棋のソースであるフロッピーもパソコンから消えていた。
強すぎて気持ち悪かったAI
そしてたぶん10年が経った。そのころうわさでは、将棋ソフトはどんどん強くなりアマチュア初段くらいになったという話を聞いてはいた。
アマチュア初段といえば、私とくらべて神様みたいな腕前だ。
私は頭の中ではしかし森田将棋の弱っちさが強く刻まれていたのでそんなたいしたことないだろうと、なんとなく考えていた。
ある日、新宿のヨドバシカメラでなんとなく将棋ソフトのひとつを(商品名はおぼえていない)購入し、会社に帰ってインストールして試してみた。
インストールは簡単に完了し、たちまち準備完了となり、私とコンピューターとの対局がはじまった。
私は相手の実力を試すために、敢えて定石を外れて、たぶん銀1枚で攻め登ってみた。
なんやかや数手が行われたときに、私の玉が詰んでいることに気が付かされた。
盤面は多くの駒はほとんど動いていない状況だった。
私はぞっとした。相手が将棋初段でこちらはめちゃくちゃやった結果なのだから当たり前だろうと、人は言うかもしれないけれど、気持ち悪くて気持ち悪くてしょうがなかった。人間なら「あっその金ただだよ」とか「それじゃ王さん詰むよ」
とか言ってくれるだろう。しかしあいつときたら、なんか容赦ない感じなんだ。
しかも考える時間が極端に短い。ぱぱぱぱぱ、はい負かしましただもんね。
コンピューターが計算を早くするのは別にかまわない。道具として考えられるから。
しかし将棋はなんというか人間の領分なんだ。
それをあいつはまったく感情を交えずやってのける。やつらは異質だ、ぜったい人間と相容れないくらい異質だ。
きちんと定石通りやってみれば良いだろうと思うだろうけど、私は気持ち悪くて
仕方がなかった。二度とその将棋ソフトは動かさなかった。
(つづく)
2020年9月17日、ケゾえもん記