ケゾえもんシネマ「Covid 19」第3話
<4月7日 緊急事態宣言発令会見>
遂に世論の圧力に屈して緊急事態宣言が発令された。この時点でのコロナ死亡者数は80名。
内閣総理大臣の説明が続いていた。
内閣総理大臣(草刈正雄)「しかし、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。
そうすれば、爆発的な感染者の増加を回避できるだけでなく、クラスター対策による封じ込めの可能性も出てくると考えます。
その効果を見極める期間も含め、ゴールデンウイークが終わる5月6日までの1か月に限定して、7割から8割削減を目指し、外出自粛をお願いいたします。」
会見が終わり総理は官房長官と話し合っている。
内閣総理大臣(草刈)「紙に書かれた通りに言ったが、だいたい強制力のない宣言だけで8割削減なんか、できるのか?」
官房長官(鶴瓶)「今後様子見でんな。様子見でんな。」
ところがその後、政府も驚くほどの自粛が行われた。デパートは休業、イベントはすべて休止、多くの店舗、大手レストランも休業。これが強制力のないただの宣言なのかと驚くほどの効果を発揮したのだ。経済は死んだ。
<4月10日 東京都知事会見>
東京都知事(黒木瞳)「政府が発令した緊急事態宣言に伴い、改正型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、11日から基本的に休業を要請する施設を申し上げます。休止を要請するのは、美容院、整体院、フォトスタジオ、ネイルサロン、土産物屋・・・。」
これで新宿、渋谷、銀座等々の大きな繁華街ではほとんどの店舗は営業できなくなりまるでゴーストタウンの様になった。しかしそこから少しずれると、たとえば新宿のすぐ隣の中野駅周辺では、かなりのレストラン、居酒屋、店舗が営業しているのだった。
NTTドコモが携帯電話の位置情報などを基に分析した、13日午後3時時点の全国各地の人出のデータによると、感染拡大前(今年1月18日から2月14日の平日平均)と比べた増減率は、モールがある千葉県木更津市の金田東の76・3%。大阪・梅田駅74・1%▽東京・新宿駅68・1%▽東京・渋谷センター街68・5%▽横浜駅67・3%――と明確な人出の減少がみられたが、これら繁華街から外れた地域ではそこまでの減少が見られないのは明らかった。ばらつきが存在した。
この様子を見たひとりの男が危機感を持ち、厚生労働省クラスター対策班の専門家会見という場を借りて爆弾発言をした。
<4月15日 厚生労働省クラスター対策班の専門家会見>
西浦教授(松尾諭)「私たちの今の願いはみなさんと同じで全国民が行動変容をしっかりして少しでも早くこの流行の拡大を止めること。
できるだけ人と人とが2メートル以内30分というものに相当しないようにすると言うことですね。」
「ひとりひとりが経験する接触率を減らすということです。接触率が減ると感受性人口が減る、ということを私たちは狙っています。」
「この様に結果的に8割、2次感染を減らすかどうか評価するために、ここに示す数式が必要なわけです。」
「空間メッシュをいっしょにしてるだけだと、いっぱい問題があるんですよね。」
もっと詳しい説明がないと、専門家以外には絶対理解不能な情報を並べたて、西浦教授は一気に危機を煽り以下の様に結んだ。
「もし日本国内で感染防止対策をしない場合、呼吸管理が必要な人が15歳から64歳で20万1000人、65歳以上で65万2000人、合わせて85万人が重篤化してこのうち42万人が死亡すると考えられます。
70%ではいけません、80%の人と人との接触を削減しないと大変なことになります」
テレビを見ていた総理大臣は顔をしかめて言う。
内閣総理大臣(草刈)「おい、いったいぜんたい、あんなことを会見してしゃべる必要があるのか?」
官房長官(鶴瓶)「困りますな、ただでさえ、予想を超えて経済が冷え込んでいる言うのに、煽るのは止めて欲しいでんな。
42万人言いますが、まだ119名しか日本では死んでおまへんで。」
内閣総理大臣(草刈)「どうしてこういう計算になる。リーズナブルという訳の分からない理由で実行再生産数を2.5にして計算したそうだが倍倍にしたら、そりゃすごい数になるだろ。曽呂利新左衛門を知らないか。」
官房長官(鶴瓶)「まあ、しゃあないですなぁ、ほんまに。わてがなんとかしますわ。」
<官房長官会見>
官房長官(鶴瓶)「あの前提とは異なり、すでに緊急事態宣言を発出して、国民に不要不急の外出自粛など協力をお願いしている。あの計算通りにはならないと政府は考える。と言うことです」
毅然とした態度できっぱり記者たちの質問に答える官房長官だった。
<この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。>
2020年8月28日、ケゾえもん記。