2020年9月18日付ケゾえもん寄稿、「宇宙の運命」シリーズの続き。シリーズ1〜4は、検索窓に 宇宙の運命 を入力すればずらっと出てくる。
アーサー・C. クラークは最先端おじさんだった
(文=ケゾえもん)
クラークの短編SFの話に戻ろう。(私は道草する)
短編SFの話、前にありましたっけ?
という質問をホクオから受けた。
実は「宇宙の運命3」の中でAIの話に脱線する前に「地球よりはるかに高度な(中略)その隊長は・・」で紹介したつもりになっていた。
この例でもわかる様に、私はこれを書き出してから、宇宙や科学のことがどっと頭に押し寄せてきた状態になってしまっていて、勝手きままに書きまくっている。
したがって話は脱線しまくり、エピソード挿入しまくり、本筋と関係ないこと
書きまくりの状態になっている。まあ、そこらへんのところはご勘弁願いたい。
Covid19の連載は調べものをしながら書かなければならなかったし、書くのが難しい場面も多々あってつらかったけど、この連載は簡単にぐいぐい書き進むことができて楽しい。
それでクラークのことについてもうちょっと話したい。
「2001年宇宙の旅」が公開されたのが1968年だけど、そのころクラークは死ぬまで過ごしたスリランカ(当時セイロン)に移住していたが小説の原稿をその当時(1960年代)にセイロンの自宅のパラボラアンテナでニューヨークの出版社に送っていたと言う。驚くべき最先端おじさんである。
ちなみにクラークは、静止軌道上の通信衛星というアイデアを世界で最初に考え付き、自身の小説にも使った。しかし特許は取らなかったのでインテルサットは特許料をクラークに払うことを免れた。
クラークはまさか自分が生きている間に実現するとは思わなかったので特許を取らなかったと話したが痛恨のミスであった。
しかしこれは人類が異常なのであって、1903年に初めて動力飛行に成功した人類は1969年には月まで行ってしまった。
クラークの初期のSFはアイデアに満ち満ちており、前回紹介した地球人全員が新天地を求めて移住するなんてSFは今の作家は簡単に書くだろうけど、当時そういうアイデアがなかったのを自分で考えてSF小説にできるなんて本当にすばらしいことだ。
私が大好きなクラークの短編SFをもうひとつ紹介しよう。
太陽の多少の弱まりのため地球は完全に氷で覆われ生命は死滅した。
逆に少し冷えた金星では金星人が進化していた。
金星人は地球探検に行って比較的氷が薄い赤道上で映画フィルムを発見した。地球は氷におおわれていたのでこれはまったく初めてで唯一の地球文明の証拠だった。
それを金星に持ち帰り再生できるようにして最初に金星人のみなに映写して見せることになった。
画面には二人の人物(地球人)が現れやがて二人は格闘を始めた。ものすごい格闘で金星人たちは目をまるくした。しかし明らかにものすごい衝撃がお互いに加わっているはずなのに、どちらも怪我などせず戦いつづけるのだった。
やがて追っかけっこが始まった。追っかけっこは乗り物に乗った追跡に変わり、衝突、転落を繰り返すのだがそれはいつまでも終わらず延々と続くのだった。
金星人たちは目をくぎ付けにされて、その様子をただただ見つめるだけだった。
やがて追っかけっこは終了し、最後に一方の人物のアップとなった。それは明らかに、なにかすさまじい表情だったが地球人のことを知らない金星人には、その表情が憤怒か恐怖か、はたまた諦念か判断することはできなかった。その人物を丸く枠が囲み、明らかにそこには地球人の文字が書かれていたが、もちろん金星人に読めなかった。
もし読めたとしたらそれは以下の様に読めた筈である。
「ウォルト・ディズニー・プロダクション」と。
<続く>
(2020年9月18日、ケゾえもん記)