ケゾえもん

スウェーデンのコロナ対策は失敗だったとはいえない:現地で働く日本人医師宮川絢子氏の分析(Forbesより)+ケゾえもん

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2020年6月18日加筆。4,500文字。

コロナの話はもう飽きて、半分忘れて暮らしていたところ、Forbes 6月16日付の最新記事情報を教えてもらったので読んでみたら、これまでさんざん聞いてきたケゾえもんの主張に沿った内容だったり、スウェーデンの社会システムについてとても参考になる話だった。

「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか」に対する宮川氏の答えは、「スウェーデンのコロナウイルス感染の高い死亡者数は、スウェーデンの福祉の欠陥をつかれたものと考えられ、ロックダウンしなかったことが失敗であると結論づけることはできない。」である。

宮川氏は、ストックホルムで入院治療が必要なコロナ患者の4割を扱ったカロリンスカ大学病院で働く医師。立場上、やや回りくどい言い方になっているこの箇所を簡単に言うと、「スウェーデンでコロナ死亡者が多かったのは、福祉システムの問題によるところが大きく、ロックダウンしなかったこととは無関係である。」ということになると思う。

詳しくは2020年6月16日付Forbes Japan掲載の、宮川絢子氏の寄稿「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか」を読んでいただきたいが、たくさんのグラフを含む4ページに渡る長文の中から、ホクオが参考になった内容を順不同にまとめておく。

2020年6月16日付Forbes Japanの記事より

メディアの誤報道

スウェーデン国外のメディアは、ロックダウンをしていないスウェーデンの挙動に注目しており、多くの報道がなされているが、それらの報道には間違ったものが多く、医療現場にいるものとしては複雑な思いになる。

スウェーデンのCOVID-19感染対策の顔となっている国家主席疫学者、テグネル氏は、これまでずっとロックダウン政策を否定してきた。そして、スウェーデンの死者数が多いことに関しては、「守るべき高齢者を守ることができなかった」とコメントしてきた。6月3日のテグネル氏へのインタビューでは、「もう少しやれることがあったと思う」とコメントしたことが、「スウェーデンは政策に失敗した(ロックダウンしないことは間違いであった)と認めた」と世界中で誤報道されてしまった。その誤報道に対してテグネル氏は、「スウェーデンの政策は間違っていたとは言っていない。改善の余地があるという意味である」と説明しなければならなくなった。

宮川絢子「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか」2020/06/16 Forbes Japan

スウェーデンコロナ対策の実態

スウェーデンの新型コロナウイルス感染による死者は5月25日に四千人を超え、同月、人口あたりの死者が世界で最も多い週があったことから、ロックダウンをしないスウェーデンの政策に対する国際的な批判が高まった。

(掲載グラフを解説しながら)人口10万人あたりの死者数は、北欧諸国の中では突出してはいるものの、ロックダウンをした他のヨーロッパ諸国の中では6月1日時点で6番目に多い値であり、ロックダウンの是非に対する判断はいまだに不透明と言えよう。

宮川絢子「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか」2020/06/16 Forbes Japan

スウェーデンの死者数を増加させた要因

死亡者の内訳は以下の通り。

  • 死亡者の90%が高齢者。
  • 高齢者の死亡者のうちのおよそ半分は介護施設に住んでいた。
  • 介護施設に住む人の殆どが、何かしらの疾患を抱えていた。
  • 介護施設でクラスターが発生した。
  • 介護施設に住んでいなかった死者のうちの多くは、ヘルパーによる訪問介護を受けていた。
  • 死亡者の約90パーセントが介護施設に住むか、ヘルパーによる訪問介護を受けていた。

勤務者を介したクラスターが介護施設で発生し、また、ヘルパーによって高齢者世帯へ感染が持ち込まれたと分析されており、そのために、高齢者における死亡者数が増えてしまったのである。

宮川絢子「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか」2020/06/16 Forbes Japan

スウェーデンの福祉システムの欠陥と死亡者数の関連

スウェーデンでは、1992年より、医療と介護は担当する管轄が異なる。その結果として以下の状況が起きている。

  • 介護施設で必要な医療の分野が弱い。常駐する医師がいないことが多く、入居者数に対する医師数も十分でないため、クラスター発生時には十分に対応することができない。
  • 介護領域での民営化が進み、人的コストの削減が行われた結果、安い労働力、時間給で働くパートタイマーが多く動員された。
  • パンデミック発生の際、少しでも症状があれば自宅待機が強く推奨されたが、パートタイマーの場合、働かなければ現金を手に入れることはできないため、症状があってもそれを隠して働くということが行われていた。医療現場や介護現場で働く人のPCR検査が行われなかったことも災いした。
  • スウェーデンで、安いパートタイムの労働力を担っているものの多くは移民であり、移民の中には、狭小な住居に多世代家族が同居していたり、言語の問題で情報が不足していたりする者も多く、クラスターが発生しやすい要因があった。
  • パンデミック当初より移民の中にクラスターが発生してしまったが、移民が介護現場やヘルパーとしての大きな労働力になっていることも、介護サービスを受ける高齢者が多く感染する原因となった。

日本で感染者、死亡者が少ない理由

日本では、学校が休校になった以外は、スウェーデンと似た政策であったと思われるが、感染者、死亡者は格段に少ない。日本人の優れた衛生観念などが有利に働いたという説明もあるが、人口比で死亡者数を見ると、東アジア諸国では日本同様に低い値であることから、それだけで低い死亡者数を説明することは難しい。

今回の新型コロナウイルス感染で得られる獲得免疫以外の免疫機構、例えば、他のコロナウイルス感染やBCG東京株接種による交差免疫、また、遺伝子や環境などのバックグラウンドの違いなど、まだわかっていない要素があり、それらが日本を含む東アジア諸国に有利に働いたのではないかと思っている。

宮川絢子「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか」2020/06/16 Forbes Japan

本稿の結論

スウェーデンの新型コロナウイルス感染の高い死亡者数は、現時点では、ここで述べたようなスウェーデンの福祉の欠陥をつかれたものと考えられ、ロックダウンしなかったことが失敗であると結論づけることはできない。

なおストックホルムでは、6月15日から全ての住民がCOVID-19のPCR検査と抗体検査が無料でできることになった。このことで、さらに感染者数が増えて世界中から批判が高まるに違いない。

宮川絢子「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか」2020/06/16 Forbes Japan
ホクオ
サイエンスに弱いながらこれまでケゾえもん師匠のレクチャーをさんざん聞いてきた門前の小僧には、この論文は、本物のニオイがします。グラフの大好きなケゾえもん師匠、読んでぜひご意見をお願いします!
ケゾえもん
やれやれ。ホクオの”本物のニオイ”なんてアテにならないし、専門家たちには岡田晴恵をはじめ、失望の連続なんだけどな。

ケゾえもん寄稿「宮川さんの論文を読んで」

宮川さんの記事を読んで考えてみました。

いまわかってることはコロナの死者は高齢者に偏っていること、また基礎疾患を持っている人も危険だということ、そして高齢者というのは往々にして基礎疾患を持っているものだということです。
以上の理由により高齢者が死者の大半を引き受けています。

(出典:NKH特設サイト

だからコロナから守るべきターゲットは高齢者なのですよ。

では高齢者を守るためにロックダウンは有効だったか?
北欧の諸国の死亡率でみるとスウェーデンに比べてロックダウンしたノルウェーで1/6、フィンランドやデンマークで1/3で、調べるのめんどくさいから調べないけれど、これらの国々でも死亡者の大半は高齢者なのだろうから、これらの国々ではスウェーデンより高齢者を守れたと言って良いと思います。

だけど1/60でなく1/30でないでしょ。単にスウェーデンに比べて1/6、1/3だっただけでしょ?それを鬼の首を取ったようにスウェーデン間違っていたと言えるようなことか?と思うわけです。

だいたいロックダウンは高齢者保護が目的でなく全員を守るが目的だったわけで、それがたまたま高齢者保護に役立っただけで、高齢者保護にターゲットをしぼるならもっと他にやり方があった筈です。そしてこれは確かに後知恵にはなります。しかし後知恵だろうがなかろうが、今それがわかったのだからスウェーデンは間違っていたんだ、やーいという切り口で物を考えるのではなく、どうしたらもっとうまくやれたのかを考えるべきなのです。

ロックダウンはやっぱり利口な方法とはとても思えないのですよ。
高齢者を守るために、すべてレストランを閉鎖し、すべてのイベントを中止しすべての人に自宅待機を強制する!そしてそれらのことから発生するすべての副作用を仕方がないことだで済ませてしまう。

スウェーデンも反省の点があるようです。高齢者施設の医療体制が充分でなかった。感染率の高い移民が高齢者のヘルパーをしていたというようなことらしい。改善できることは改善すればいいでしょう。

しかしその改善方法の選択肢に今後スウェーデンにもロックダウンを導入すれば良いというのはないでしょう。高齢者の死亡率を1/6にしたいならもっとましな方法がいくらでもある筈です。

2020年6月17日、ケゾえもん記

ホクオ
岡田晴恵を斬りまくったケゾえもんが、宮川氏にはひとことも反論していない。本物のにおいを嗅ぎ分けた私の嗅覚は正しかった!

高齢者に冷たいスウェーデンのやりかた

ところで、上で引用した宮川氏の寄稿文の中でも、スウェーデンの病院では「80歳以上の感染者や80歳以下であっても余病のある人については、集中治療室での治療適応外とされている」と書かれてあったが、スウェーデンで、ICU治療室を若い健康なコロナ患者のために確保するために高齢者を犠牲にするというやり方については、国内外を問わずかなり批判されている。

宮川氏が、このやり方に賛成しているかどうかはわからないが、日本のテレビ局のインタビューを受けて、病院で治療を受けられなかったために亡くなった高齢者についてどう思うかと聞かれ、「お気の毒でした。」と答えていたのがテレビで流れたそうだ。それですますなんてひどい、自分の親が同じ目に遭ったらどう思うのか、と言っている人もいた。

このテーマは、コロナ対応に限らず、かつて高福祉で名を馳せていたスウェーデンの高齢者ケアサービスが、質も量も大幅に低下している実態と合わせて興味深いのでまた改めて詳しく調べてみたいが、さしあたって本記事では、スウェーデンのコロナ政策としてロックダウンしなかったことは失敗とはいえない、個人的には、ロックダウンが必要だったとは感じられない、といういう点にしぼってまとめた。

■関連:スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する 2020/05/7 Forbes Japan

この記事は、以前に日本在住の知人に教えてもらって逆輸入して読んでいた。

宮川絢子(みやかわあやこ)氏はこんな人

写真の出典:Forbes Japan

1964年生まれ。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。


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