ストックホルム、アーランダ空港の壁のニルスのオブジェ
スウェーデンの20クローナ紙幣には、片面にアヒルに乗って空を飛ぶニルス、片面に作者のセルマ・ラーゲルレーヴが描かれています。2011年9月現在約230円の価値のこの紙幣、アメリカのebayで1000円ぐらいで売られていました。スウェーデンに在住の方や旅行された方は、日本帰国時のおみやげになるかも!?
「ニルスのふしぎな旅」は、「子ども達に自分たちの国の地理を楽しく学べるような物語を」という、スウェーデン政府の依頼によって書かれたもので、ラーゲルレーヴは、ニルスといういたずら小僧が、小人になって、ガチョウと一緒にスウェーデン中を旅する、という素敵なお話を思いつきました。「鳥瞰図(ちょうかんず)」というのがありますが、まさに空を飛ぶ鳥の目線で、上空から見下ろしたスウェーデンの風景が描写されています。この本を片手にスウェーデンを旅するのもあこがれますが、この本を読むだけで、スウェーデンをすみからすみまで旅した気分になれるかもしれません。
上の写真は、「原書にもっとも近い翻訳本」とされる福音館書店の上下本です。菱木晃子による新訳で、「ニルス」生誕百周年(1906年に前半、1907年に後半が出版)を記念して2007年に出版されたこの本には、1931年版の原書のベッティール・リーベック(Bertil Lybeck)による挿絵が160枚再現されています。子供向けの本とはいえ、かなり分厚く、読み応えがありそうな本です。(買いましたが、〝積ん読”状態です。)
スウェーデン語の原書は文字も小さい上、二冊に分かれていない分、日本語版よりさらに分厚い約600ページ。本棚の飾りもの。いつの日か読める日が来るのでしょうか。
セルマ・ラーゲルレーヴ, Selma Lagerlof,1858 – 1940 (享年81歳)
1858年、スウェーデンの中部、伝説や民話が数多く残っているヴぇる無ランド地方にある大地主の家に4番目の子供として生まれる。出生損傷のほか、幼いころの病気がもとで、両足が不自由になり(後年、克服。)、内向的で読書好きな子どもだった。1884年、父親の死、破産の末、一家は、家と土地を手放す。1885年、ストックホルムの師範学校を卒業し、スコーネ地方で教師の仕事に就くかたわら、作家活動への意欲を燃やす。1895年、10年間の教師生活にピリオドを打ち、作家活動に専念。1909年、女性で初めてのノーベル文学賞を受賞。
フェミニストとしても知られている彼女は、レズビアンで、1894年に知り合った同じく画家のソフィー・エルカン(Sophie Elkan)がパートナーでした。ふたりは互いに相手の作品に対するよき批判者でもあったということです。英語のWikipediaには、その後、ラーゲルレーヴの助手になった教師のヴェルボーグ・オランダー(Valborg Olander)に、エルカンが嫉妬して、関係がこじれた・・・という内容が載っています。
紙幣に描かれているのが、この時のラーゲルレーヴですね。