観光地化されすぎて、秘境が秘境でなくなってしまうことは多い。自分も観光客なのは百も承知だが、せっかくのいいところも、あまりにも観光地化されていると、白けてしまう。できれば、あんまりたくさんの観光客と一緒に観光したくないのが本音。その点、北欧人は、アジア人はもちろん、南欧人に比べても、商売っ気が格段に少ないので、北欧の観光地はギラギラしていない。
美しい景色を求めて世界中から人の集まる観光地の、さらに立地条件がベストな場所で、たった15平米のとても小さな宿に宿泊したとき、改めてそれを実感した。
宿、「人形の家(The Doll House)」のある場所
ノルウェー北部、フィヨルド沿岸のロフォーテン諸島のひとつの小さな島Sakrisoy、宿は、その小さな島の外れにある。
下の地図の黄色い丸で示されているThe Doll Houseで、人形の家というその通称にふさわしい、たった15平米しかない、定員大人2名(プラス子供は可)の小さなワンルームコテージだ。
ロフォーテン諸島は、最近は、「アナと雪の女王」の背景となった島であることでも知られていて、外国人客も多い。冬はオーロラが見えるが、いろいろなアウトドアのアクティビティが楽しめる夏はとくに人気があって、このあたりの宿泊施設は、何ヶ月も前からどこも満室になる。
だから、どんなに狭くても、目当ての場所に数日間の宿が確保できたことをありがたく思いながら行ってみたのだが、驚いたのは、宿の狭さもさることながら、その部屋より大きなバルコニーや敷地内の広々とした庭、周りの空間の広さだった。
アジア人なら、間違いなく、一人でも多く、一室でも多く宿を提供しようとして躍起になるはずのエリアなのに、ノルウェー人はそうならない。
宿の遠景。
宿の近景。
宿から真正面に見えるのは、下のロフォーテン諸島の看板イメージ。
横を向けば下のこの景色。
宿、「人形の家(The Doll House)」
15平米の宿は、荷物の置き場もないぐらいの狭さだったが、キッチン、シャワー、ソファ、大きなテレビ、ロフト・・・と、必要な設備はすべて整っていた。ちょっと豪華なキャンピングカーといったところだが、細部まで、手抜きのない木造りの構造が心地よい。
そして、その最小限の空間しかない室内と、バランスの取れない広々とした室外。
巨大なバルコニーは、室内より広いぐらいで、宿泊できるのは大人2名でも、お客を招いてホームパーティーが十分できる。
広い庭に置かれた、子供用のミニテーブルセットは、ちゃんと敷石に固定されており、裏庭にも子供用のブランコなどがあった。
そして、小さな「人形の家」に入っていくためには、立派すぎる階段。
どれも、商用目的にはならない。北極圏なのだから、バルコニーなんて、使えない季節も長いのだ。
人形の家のオーナー
人形の家のオーナーは、となりの大きな(ふつうの)家のノルウェー人だった。
聞くと、15平米の建物は、建ぺい率の関係で、それより大きな建物を建てるためには、いろいろ面倒な手続きがいるからということで、少しは納得もしたが、それでも、オーナーが、愛情を持ってこの小さな家を設計したこと、金儲け主義ではないことはよく伝わってくる。
こういう北欧人の態度には学ぶことが多いと思う。
おまけ
「人形の家」のシャワーの給湯器は、台所のシンクの下に入るサイズのタンク。勝手がわからない息子が、もたもたしながらシャワーを使っていたら、お湯は10分も持たず、親は顔しか洗えなかった。やはり、北欧でのシャワーは手早くが鉄則!(ブログ内関連ページはこちら)