宇宙の運命1
(文=ケゾえもん)
私のガールフレンドに「状況証拠で科学を信じる」の記事(2020/9/13)はどうだったと聞くと、ケプラーのなんたらが頭痛くなるから読んでないと言う。
なんたること、ケプラーは別に本筋とは関係なくてケプラーの法則を理解することは私は全然求めていないのであって・・
まあ、言っても無駄か。しかし私のガールフレンドは変わっていて宇宙の話は好きなのだ。コズミック・フロントの番組など見させるとおとなしく座って食い入るように見ている。
最近では宇宙の運命について知って、少しくショックを受けているらしい。それでちょっと宇宙の運命について皆様にお話ししたい。それには宇宙の距離を測る方法についてお話しする必要がある。距離が測れたから宇宙の運命がわかったのだ。
それにはかわいそうなヘンリエッタ・リービットの業績の話をしたいのだが、さらにその前にどうやって太陽と地球の距離を測れるかについて話したい。
だってそこから始まるのだから。
それにはケプラーの第3法則とそこから導きだされる方程式を使う。
ほら、方程式と聞くだけで頭が痛くなるそこの君!
なにも方程式の一般解を出せとか言っているわけでなくそれを使って計算しろと言っているわけでもない。
じゃあ頭が痛くなる必要はないじゃないか。
ケプラーの第3法則によれば、惑星の公転周期の2乗は軌道半径(長軸)の3乗なのだ。
これをちょっと拡張すると地球の公転周期(365.2日 観測でわかる)と
金星の公転周期(224.7日 観測でわかる)と地球から金星までの距離が
わかれば地球から太陽までの距離がわかる。信じてくれ。
問題はどうやって地球と金星の距離を出すかだが、これは実はレーダーで測れるのだ。しかし太陽は残念ながらレーダー波を反射しない。
したがって地球と太陽の距離は上記の計算から求めなければならない。
このようにして地球から太陽までの距離を測れたら何がいいかというと大三角測量ができるのだ。ある星の位置を精密に観測して半年たって同じ星を観測したら、三角測量の原理で星までの距離が判明する。
判明すると言っても、最初はこの方法ではせいぜい数光年先の星の距離がわかるくらいだった。しかし今はNASAのガイアという衛星があり、この衛星は地球から1万5千光年までの星の距離をかなり正確に測ることができる。従ってこの範囲にいる後述するセファイドまでの距離を測ることができ、セファイドの絶対的明るさが判明する。
ヘンリエッタ・リービットは1908年ころハーバードの天文台で働いていた。当時は女性は望遠鏡を扱うことは許されず、男性の半分の時給で下働きのデーター整理の仕事をしていた。
彼女はセファイドという変光星を写真乾板から探す名人だった。
リービットは銀河系のすぐそばにいるマゼラン星雲の中にも多数のセファイドを発見した。ところがリービットはデーター整理しているとマゼラン星雲の中のセファイドの変光の周期と光の強さに1次関数的相関関係があることを見つけた。
マゼラン星雲の中にいるということは地球からそれらのセファイドまでの距離はだいたい同じと見なすことができる。
そうだとすると、この関係を使えばあとは距離がわかっているセファイドが1個でもあれば、あらゆるセファイドの絶対的明るさが判明することになる。
(その1個のセファイドは三角測量の原理で見つけられた)
つまりセファイドが有れば、そのセファイドから地球までの距離がわかるということだ。
その原理を利用してエドウィン・ハッブルはアンドロメダ星雲の中にセファイドを発見し距離を90万光年と推定できた。ただしハッブルのせいでない間違いがあり(当時衛星ガイアもなかった)アンドロメダまでの距離は250万光年であることが今はわかっている。
宇宙の銀河までの距離を測れるようにしたリービットの業績は偉大だったが彼女はやがてわすれ去られてしまった。
しかし1925年、ノーベル賞委員会はリービットの業績を再発見して(幸いなことに彼女は論文を残していた)ノーベル賞を授与すべくリービットの行方を探したが彼女はすでに癌で他界していた。
死者にノーベル賞は授与されない規則だった。
さて宇宙の運命を知るためには、セファイドを見つけらる限界を超えた距離を測ることが必要だ。そしてそれはサウル・パールムッターによって成し遂げられ彼に2011年のノーベル物理学賞が授与された。
パールムッターはどうやってセファイド検出限界を超えた銀河までの距離を測ったか?
そしてそれによって判明したとんでもない宇宙の運命とは?
<続く>
2020年9月14日、ケゾえもん記