【ケゾえもん映画寄稿】映画「エルビス」を観た

★2023/03/24 ケゾえもん加筆(追記2)

「エルビス!」

(2023/02/17 ケゾえもん寄稿)
最近、映画「エルビス」を見た。作品のプロットはプレスリーの破滅を描くことに集中している。トム・ハンクス演じるパーカー大佐にエルビスが操られ搾取されるということがひとつの大きなストーリーの軸となっていて、トム・ハンクスの誇張された悪役ぶりが話をとてもおもしろくしている。

パーカー大佐はある大御所カントリー歌手のマネージャーをしていた。大御所の息子があるレコードをかけると大御所は「黒人の音楽だな。うるさいからとめろ」というが息子は「流行ってるんだから、聞いといた方がいいよ」と言い、彼、明日のコンサートに出るんだと言う。パーカーは疑わしそうに「あの劇場は黒人は出演できない決まりだぞ」というが大御所の息子はいたずらっぽく言う。「そう思うだろ?でも彼は白人なんだ」「白人だって!?」

パーカーが見たのは出演前に舞台が恐怖で震える若い男だった。舞台に出たプレスリーは緊張でまったく精彩がない。つぶやくように歌い始める。

「OH,baby baby baby baby」

聴衆はシーンとしてしまう。その時だれかが叫ぶ

「髪を切れよ、ホモ野郎!」

パーカー大佐「その時、稲妻が走り、彼は変身した」

「well you may go to college you have a pink cadillac」

激しく体をくねらせて歌う彼に聴衆の男性は唖然として女性は全員発狂する。

「きゃー!きゃー!」

年配の女性が憂えるように立ち上がると叫ぶ。

「きゃーー!」

この映画を見てから、ユーチューブでエルビスの若い時の映像をみたけど、ここまでどぎつく演奏している例はない。まったくのフィクション。パーカー大佐だってあそこまで悪人ならさすがにプレスリーはもっと早いうちに手を切っていただろう。フィクションだけど、この映画ほんとうにおもしろい。

いろいろあって、プレスリーは晩年(と言っても30代)にラスベガスの特別ショーという形態にたどり着く。

パーカー大佐が勝手に計画して契約してしまった連続ショーで、海外コンサートを望んでいたプレスリーにパーカー大佐は言う。

「海外コンサートは経費がかかり過ぎて、リスキーだ。しかしこのラスベガスのショーはすべて経費はホテル持ちだ。リスクゼロなんだ。お前はすべて好きなようにやっていいんだ」

それであの形式のショーを延々10年続けることになる。

ドラムが打ち鳴らされてトランペットがプワッパパーと同じ短いメロディーを繰り返す。
かぶせてトロンボーン ぷぁーんぷぁーんと威勢よく鳴る。

一流バンドと有名黒人3人組コーラスグループと男性コーラスグループを後方に従え、一同は別にダンスを踊るわけでなく手拍子と体を左右にに振るだけでエルビスを迎える。

そこに例の襟の高い、ズボンのすその広い、ボタン状の飾りがたくさんついたトレードマーク衣装を来たエルビスが現れると観客の興奮はこれだけで最高潮。バンドの世話役からギターを受け取るとおもむろに

Thats alright ,mama
Thats alright for you

これで、聴衆の女性たちは最大の歓迎の意思を示すためにキャーっと叫ぶ。

映画はとてもおもしろかった。ただ残念なのが歌っているのがエルビスでないということ。プレスリーの歌唱ったらものすごいからね。輪郭くっきりのあの歌唱は比類がない。美空ひばりがそうだった。

晩年(と言っても40歳くらい)に歩くのもままならなくなってもコンサートを続けてもうピアノの前に座って弾き語りしかできないときの映像が残っているけど歌はものすごいままだよね。

プレスリーの歌唱はたくさん録音残っているんだから、それをうまく使って俳優(オースティン・バトラー)が歌っているように見せてくれたら本当に気持ちの良い映画になったのにと残念でならない。

ケゾえもん

<追記>

読者からウィキペディアに以下の記述があると注意があった。

「2022年6月12日、ラーマンは作中でエルヴィスが歌うシーンにおいて、若い時はバトラーの声を、年を重ねた時はエルヴィス本人の声を使用していることを明らかにした」

へーそうなのかと思い調べてみることにした。
私は映画エルビスを2回飛行機で見た。それからワウワウが放送したので録画して、女性の聴衆を発狂させてしまう例の場面だけテレビで見た。録画ディスクは人に貸してしまってある。それで調べるとアマゾンプライムで無料で見れる。だから今、私はパソコンで映画エルビスを見ている。
私はオーディオファンとして、パソコンからは相当なクォリティの音が出るようにしてある。

ラスベガスコンサートのリハーサルのときに、楽団にエルビスが指導するときの声は確かにエルビスのもののようである。これは恐らく映画エルビス・オン・ステージあたりから取ってきたものだろう。
クリスマスの晩に白いスーツ姿で歌うIf I can Dreamは、これはエルビスの声を使っているようだ。
しかしこの後、エルビスがラスベガスで歌うようになってからは、映画ではまとまった尺でエルビスは歌わない。しかもさして長くない尺の間にいろいろなエピソードを挟み込んでしまっていてゆっくり歌を聞かせてくれていない。

今調べて知ったのだけど映画の最後で体調悪いエルビス本人が出てきてピアノの前で歌う場面は、エルビスの本当にラストになったコンサートのものらしい。これを使って映画の最後に本人を登場させるというやり方はまったく正しい。
しかし余計なコーラスを後付けで加えているようだ。これはまったく正しくない。今回分析のためパソコンで映画を精査してこのコーラスが付け加えられているのを発見して、私はやれやれと思ってしまった。エルビス本人の録音をそのまま使うことの大切さを製作者はわかっていない。

若いときのエルビスの場面でエルビスの残した録音の声では場面を作るのが難しいのはわかる。しかしたとえ映画が不完全になってもいいから徹頭徹尾に映画では本物のエルビスの声だけを使うべきだったのだ。

ヘイライド劇場で女性たちを発狂させる場面では、女たちは魔法にかかってしまったわけじゃないか。映画を見てる人にこの女性たちが魔法にかかったのは当然と納得させるためには、ここではエルビス本人の声である必要があるだろう。

<追記2>

映画で驚かされるのはトム・ハンクスの老けぶりなのだけど、私はこれはトム・ハンクスの努力による、いわゆる「デ・ニーロ・アプローチ」と勝手に考えてさすがだと思ってしまった。
しかしこれは実はただの特殊メイクだと教えてもらってその手があったかと合点した。

ところでそれを調べているうちに、この映画はプリシラ・プレスリーの協力があったということがわかりこれは本当に驚いた。女は怖い。私がプレスリーなら自分が破滅していく過程を描くこんな映画作られるの絶対嫌だと思うもの。

それで思いだされるのはエド・ハリスがベートーベン役をやった「敬愛なるベートーベン」て映画。詳しくは忘れたが耳のまったく聞こえないベートーベンがどうしても9番交響曲の初演を指揮しないといけなくなり、舞台の袖に隠れた若い美しい音楽家志望の女性が合図を送り、ベートーベンがそれを見て指揮して演奏会大成功というのがハイライトの場面になった映画。この映画の中でベートーベンの甥のカールがベートーベンの机からお金を盗むシーンがある。これを見て170年もたって、自分の窃盗を衆人環視されるなんてとカールに同情してしまった。

写真はカンヌ映画祭で映画プレスリー関係者が記念撮影したもの。左から2番目がプリシラ・プレスリーらしい。

●エルヴィスの妻が主人公の映画「プリシラ」
https://gaga.ne.jp/priscilla/

ケゾえもん



※アイキャッチ画像の出典はこちら

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