教養あふれるケゾえもんによる「ベン・ハー」に関係ない話の多い楽しい読み物。ちびくろサンボやルーブル美術館ほか、雑学知識満載のお勧め記事!(2,100文字)
「ベン・ハー!その5」
(文=ケゾえもん)
「ベン・ハーに、いちゃもん」というテーマで始めた連載だが、だんだん別にいちゃもんつけなくていいやと言う気になってきてる。(私、はなし脱線ばかりしてるし)
「ベン・ハー」映画に、いちゃもん
そりゃ私から見るといろいろある。どうしてベン・ハーの母と妹はらい病になったことがわかったのにそのまま釈放されたの? どうして没落させられたエルサレムの一等地に立ってる筈のハー家に当時の召使たちが住んでられるの? らい病患者の居留地の崖の上から食料を渡すシステムは納得だけど、ちょっと行くと小道があってすぐ崖の下に出られるって安易過ぎないか? 重態だと言う妹がよたよたでも長い距離歩くのはどうなのか? キリストが死んで大雨になったちょうどその時、雨宿りに絶好な岩がせり出した場所の前にいるというのはこれまた安易過ぎないか? キリストに水をあげたベン・ハーがキリストが死んでがっかりして帰宅するのはいいけど、あれだけ心配した母と妹をおっぽり出したままっておかしいだろ。
ささいなことかもしれないけれど、黒澤映画の場合こういう突っ込みをするような箇所はないんだ。本当だから一度その観点で各作品を見直してごらん。
イエスの起こした奇跡
さて、「ベン・ハー」で、イエスは母と妹の病気を治したのだけれど、病気を治すというのはイエスの起こしたという奇跡(新約聖書参照)の中でも回数の多いものだ。他にイエスの起こした奇跡で子供のころから私の印象に残っているものは、水を酒に変えたというものだ。
どうしてこの奇跡が好きかと言うと、酒を飲まない子供のうちから、ただの水がおいしいワインに変わったというのはもう心の中で舌なめずりさせられて、つまり私の心の琴線に触れたわけなんだ。
同じく私はバター好きなのでちびくろサンボという童話で虎がぐるぐる回ってバターになるという話は強く強く心に残っている。
ワインの奇跡は、婚礼の宴会でぶどう酒がなくなって、イエスの母がどうしよう?とイエスに言ったらイエスはワインの壺に水を入れろと指示する。いくら酔っ払いばかりでもばれるだろと母親が心配したら、それが最高のワインになっていて、世話役が、「酔っ払ってから安物ワインでごまかすのが常だけど、最高のワインを残しておいたあんたは偉い」と言ったそうなのだ。
しかしこの奇跡、新約聖書にわざわざ書いてあるわけだけど、病人治すのはわかるけど、奇跡の無駄使いでない?と私など考えてしまう。
このワインの奇跡をテーマに描かれた有名な絵は、ルーブル美術館のモナ・リザの向かいに飾られている「カナの婚礼」。向かいと言っても部屋が広いから30メータくらい向かいだ。この絵7メータ✖️10メータもありルーブル最大、ナポレオンのイタリアからの略奪品だ。ナポレオン没落の後、各国からのルーブル収蔵品に対しての返還要求をあの手この手でくぐり抜けた当時のルーブル館長ドゥノンが言ったこの絵が返せない理由は、大きすぎて傷んでおり輸送に耐えられない(嘘)。だけどそれで絵はルーブルに残った。
しかし、新約聖書が言うイエスが奇跡を起こしたという結婚式は中東ガリラヤの小さい村の筈だけど、「カナの婚礼」ではイタリア貴族の大結婚式になってしまっていて、なんのこっちゃ、ぜんぜん無理があるだろと思ってしまう。なにも誰がみても新約聖書に反するバーチャルな世界を修道院を飾るために描かせても(修道院が注文して描かせた)しょうがないのではと私など思ってしまう。わからん。
(続く)
私の好きなイエスの奇跡、今回は、「カナの婚礼」よりワイン部分を切り取ってカバー写真とした。
※ルーブル美術館収蔵「カナの婚礼」Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Droits réservés /distributed by AMF-DNPartcom
(2021/5/14 ケゾえもん 記)