「ベターッと開脚」ベストセラー本のすごい力

 

2017年1月、東京の電車の吊り広告でこの本を見るや、すぐに書店に走って中身もろくに見ずに購入。
そして、ストックホルムに持ち帰ったまま、こんな本を買ったことさえすっかり忘れていた。

思い出したのは、数ヶ月後、久々にバランスボールの上に仰向けに転がった時。床近くで、顔が逆立ち状態になった時の視界に、本棚の下の方に平積みにしていたこの本が入って来た。

その日から、早速トレーニングを始めたが、素晴らしい本だ。

トレーニングを始めて10日たった現在、明らかに進歩もあるのだが、だから素晴らしいのではなく、細部まで、思いと配慮が込められているのが、ひしひしと伝わってくる本なのだ。

一般に、マニュアル本というものは、中身がナイことが多い。

欲しい情報は、ひどい時には1ページ以内で事足りるし、それ以外のページは、同じ内容の繰り返しだったり、無意味だったり、どうでもよかったりする。

ところが、この本は、そうではない。しょっぱなの「まえがきのまえがき」から、引きつけられる。この本を作った編集者、黒川精一氏の言葉だ。

ぼくは小さなころから、
体たかたいことが悩みでした。
前屈しても、もちろんマイナス。

(中略)

体育座りすら、ぼくには苦痛でした。
体がかたくて、後ろに倒れそうになっちゃうんです。

そう、そう、そう!と、大きくうなずきながら、握りこぶしに力が入る。

黒川氏は、「体育の授業のときにらくらく開脚している女子」やテレビに出てくる体操選手やバレリーナを見ては、うらやましい、かっこいいと思い、「ぼくもいつかあんな風にやってみたい」と憧れながら、アジの開きを見てさえも、開脚を連想する。

そして、開脚ができるようになりたい理由は、健康に良さそうだからとかそうゆうものではなく、

ぼくが開脚したい理由ーーー。
それは、開脚できたらかっこいいからです!

ズバリ、それ! わかる!

と、ひざを打ったところに、で〜んと、巨大な「アジの開き」の挿入画。

開くを意識した本だから、開きやすい製本にした、などというのもツボにはまった。

この本を一通り最後まで読むと、俄然、やる気が出る。

やる気。それがすべてと言ってもいいのではないか。

誰だって、毎日柔軟体操を続ければ、それなりに身体がやわらかくなると知っている。

開脚に限らず、語学でもコマ回しでもなんでもいい。コツコツ地道な努力を続ければ、特別な才能がなくても、できるようになるはずだ。問題は、モチベーションが続かず、地道な努力が続かないということだ。

そのモチベーションを高めてくれる力が、これほどあるマニュアル本には、これまで出会ったことがない。本、丸ごとに愛着が湧き、気持ちのいい良書に出会った満足感を覚えて、毎日、欠かさず、アジの開きを思い出しながら、本を開いてトレーニングをやっている。

だから、酷評オンパレードのアマゾンレビューを見て驚いた。

Youtubeの動画(再生回数250万回を超えた人気動画)だけで十分、わざわざ本を買わなくてもいいという意見が多く、「広告にだまされた。」とか、「写真にだまされるな。」とさえ言われている。

ホクオが、隅から隅まで丁寧に作られた本だと感動しているのに、「小冊子にして配れば事たりる内容を、やっつけ仕事で本にしている」と言う声もあった。

100万部も売れたそうなので、アマゾンレビューが悪かろうが痛くもかゆくもないかもしれないが、それでも、この本は、ホクオにとって、珠玉のマニュアル本なので、いちいち弁護したくなる。

「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」というタイトルの、「すごい方法」そのものは、確かにそれほど特別でもすごくもないかもしれない。しかし、「自分にもできるようになりそうだ」と信じて希望をもたせてくれる力、「これぐらいなら続けられる」と動機づけてくれる力は、絶対にすごいと思う。

ついでに、この方法は、「四股立ち」がどうしてもできない、という人にもおすすめである。スウェーデンの空手クラブで四股立ちの決まっているこの女の子、この通り、開脚もバッチリ。

Wd-laboのOtsuka氏前のページ

日本人のための日本語検定次のページ

関連記事

  1. 文化、音楽、本

    スウェーデンの作家

    スウェーデンの本といえば、「長くつ下のピッピ」と「ニルスのふしぎな冒険…

  2. ケゾえもん

    【寄稿】忠臣蔵を知らない最近の若いもんに、素晴らしさと面白さを伝えたい(ケゾえもん)

    スウェーデンでアジア映画祭があって、ストックホルムの映画館で「決算!…

  3. ケゾえもん

    【宇宙の運命1】まず宇宙の距離を測る(ケゾえもん)

    ケゾえもんイメージキャラクター宇宙の運命1(文=ケゾ…

  4. ケゾえもん

    【映画寄稿】当時感動した「ベン・ハー」につっこみを入れる 2(ケゾえもん)

    ケゾえもんイメージキャラクター「ベン・ハー!その2」…

  5. ケゾえもん

    【映画寄稿】「ベン・ハー」5、イエスが起こした奇跡、私のお気に入り (ケゾえもん)

    教養あふれるケゾえもんによる「ベン・ハー」に関係ない話の多い楽しい読…

follow us in feedly

最近の記事

人気記事

  1. スウェーデンのゆるいコロナ対策は失敗か?死亡率グラフで一目瞭…
  2. 【コロナ寄稿】明けないコロナの夜明け:コロナの終戦はいつ?(…
  3. スウェーデンでタコパ:こだわりタコ・ラブラブわんこ・およげた…
  4. 報道ステーションでスウェーデン:日本人はなぜコロナをそんなに…
  5. 小林よしのり「ゴーマニズム宣言コロナ論」とケゾえもんコロナ映…
  6. 「スウェーデン方式の真相」と老人のコロナ死を自然死だと言えな…
  7. 不朽の名作映画「ニューシネマパラダイス」
  8. 流行の北欧ぬりえ作家ハンナ・カールソン、自分の両腕にもぬりえ…
  9. スウェーデンの夏休み:コロナに負けず遊びざんまいの2ヶ月半、…
  10. 【コロナ寄稿】たけしのTVタックルで三鴨廣繁がぼろを出す(ケ…
  1. Uncategorized

    こどもの時間感覚
  2. 日本

    日本人のための日本語検定
  3. コロナ

    【コロナ寄稿】驚きのワクチン早打ち!医師はキャスターつき椅子で滑りながらワクチン…
  4. Uncategorized

    文化の違い
  5. ケゾえもん

    【読み物】ケゾえもんは電気羊の夢を見る その1(ケゾえもん)
PAGE TOP