(更新日2017/07/10)
どんどん日が長くなってきて、夜の10時まで明るい。夜更かししていて暗くなったと思ったら、午前2時過ぎには、小鳥がさえずり始め、3時には夜が明けるのだから、ギンギン・ソワソワせずにはいられない。そんな季節の6月の始めに、スウェーデンでは学年末の終業式や卒業式がある。
Contents
国民的行事としてのスウェーデンの高校の卒業式
18歳で成人を迎えるスウェーデン人にとって、高校の卒業式は、成人式の意味合いも兼ねている。
スウェーデンでは、子供が18歳になると、親は「保護者」ではなくなる。銀行口座などの個人情報に、親だからという理由で子供に無断でアクセスすることもできなくなるし、親が子供の大学進学のための学費を出すということも普通はない。
そのため、スウェーデンの高校の卒業式は、日本の成人式よりももっと実質的な儀式としての意味がある。卒業生たちは、この先、親を頼らず、自分で責任を持って生きていかねばならないし、親にとっては、「ひとまず子育て終了」という感慨深さがある。
そんな、卒業生にとっても、卒業生の親にとっても、大きな節目のひとつといえるスウェーデンの高校の卒業式(スウェーデン語でStudenten)は、さらに、夏の風物詩としても重要な役割を持っている。
たとえ自分の身近に高校3年生がいなくても、スウェーデンに住んでいれば誰もが「今年も高校の卒業式シーズンがやってきたなぁ」と実感するのだが、その感覚は、たとえば日本人が、桜の咲く季節に、日常生活の中で年度の変わり目をしっとりと意識するようなもの、というだけにとどまらない。
もっと賑やかなお祭りムードで、この時期を境に、世の中は、退屈な日常から、一気に非日常へと突入する。
子供たちは、2ヶ月半の夏休みに入るが、北欧では、長い夏休みは子供だけの特権ではない。たいていの大人も5週間〜8週間の夏休みをとる。
よって、スウェーデンの高校の卒業式は、誰にとっても「夏休みがやってくる!」という、浮き足立った気持ちを盛り上げてくれる前奏曲であり、これから始まるフルコースの前菜のようなものであり、ホリデイシーズンの到来を告げながら鳴り響くゴングなのだ。
これがスウェーデンの高校の卒業式だ
スウェーデンの高校の卒業式は、各高校によって違うが、6月6日建国記念日の祝日を前後して行われ、その頃には、連日、おなじみの光景が見られる。卒業式の定番アイテムと一緒に紹介したいと思う。
卒業生すし詰めトラック大行進
歓声をあげる卒業生を乗せ、クラクションを鳴り響かせながら、こんなトラック(スウェーデン語でStudentflak)が街のあちこちで見られる。
Youtube参考動画。(24秒)
卒業式ファッション
男子はスーツ、女子は白いワンピースが定番。
日本の成人式ファッションショー同様、女子たちは、何ヶ月も前から、この日のための白いワンピース選びに気合いを入れる。どれも同じように見えると言ってはいけない。
卒業帽(Graduation cap / Studentmössa)
卒業生たちは、男女ともに、自分の名前と卒業年度を刺繍した卒業帽を準備し、これを被って卒業式に出席する。この帽子は、卒業後も、一生、記念に持っている人が多く、高校の先生が、自分が高校を卒業した時に被った帽子を被って生徒の式に出たりもする。
プラカード
卒業帽と合わせて、事前に準備しなければいけない必須アイテムは、「自分の幼い頃の写真を貼り付けたプラカード」。
写真の出典
卒業パーティー (Graduation Party / Studentenfest)
卒業パーティーは、卒業生の親が、親戚や「親の」友人・知人を招いて行い、招かれた客は、卒業生へのプレゼントを持って集まる。このパーティーをしない家庭は、親子揃って、パーティーをする家庭の客として招かれる。
自分の家に高校の卒業生がいなくても、知り合いの誰かの子供にはいたりするので、卒業パーティーに出席することはごくありふれたことで、この時期、街の文房具売り場には、卒業パーティーや卒業プレゼント用のグッズコーナーが大々的に設けられる。
このスウェーデンの伝統的なケーキ「プリンセス・タルト(Princesstårta / Margipan cake)」も・・・
この季節には、卒業帽を型どられた、卒業パーティーバージョンになって出回る。
(2015年に招かれたパーティーの時のケーキ。)
卒業生たちは、卒業式のあと、トラックに乗って街を凱旋し、親、または友達の親の準備した卒業パーティーに出て大人たちからお祝いをもらったあと、まだ明るい夜の街に繰り出して後は若者たちだけで楽しむ。
以下は、2017年6月8日に招かれたパーティーアルバム。
おまけ
卒業式バージョンのぬいぐるみ
スウェーデンブランドのBukowskiの卒業式バージョンフクロウ
ホクオから卒業生へのプレゼント
お呼ばれしたのは、日本人ハーフの兄弟だったので、いただきものでお気に入りの、こんなポチ袋(紙イング社の「こぶくろあめこ」)を活用。
お兄ちゃんには、吹き出しの中に「これからの人生は甘いだけじゃない」と書いた”お年玉”(欧米では、商品券ならともかく現金をプレゼントにするのは下品でタブーだが、日本人ハーフということで決行。)と、92パーセントの苦いチョコレート。(ドイツVivani社のものがおすすめ。日本でも買える。)
弟には、同じポチ袋の”お年玉”に「これからの人生は、甘いだけじゃないけど、かめばかむほど味が出る」と日本からのふるさと便に入っていたスルメを入れておいた。