「クライバー指揮の映像付きオペラ」
(ケゾえもん 2023.10.13 記)
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はじめに
椿姫は私個人として、ある特別なカテゴリーに入るオペラだ。同じカテゴリーに入るオペラを並べると
1.椿姫
2.トリスタンとイゾルデ
3.ラ・ボエーム
4.オテロ
5.カルメン
6.こうもり
7.魔弾の射手
8.ばらの騎士
それは指揮者カルロス・クライバーの映像付き録音を私が所持しているということ。ご存じの様にクライバーは録音嫌いで有名で大指揮者としては本当に少ししか録音を残していない。
オペラは録音だけでなく映像つきに限る
ここで説明しておくが、私は断然映像付きのオペラを好む。わたしだってクラシックファンのはしくれだから、CDのオペラを聴いてちゃんと情景を想像して楽しむということができる訓練は積んである。しかしね、忙しい人生に置いてそういうことをちゃんとする状況はなかなか出てこない。
物語の朗読を聞くということを考えて欲しい。きちんと集中して聞かないと意味がないでしょ?雑誌を読んだり、テレビの画面をみたり、メールをしたりしながら物語の朗読は聞けない。クラシック音楽というのはそういう性質を持っていて、つまり物語があるのだ。(オペラに限らず)
それをあなた方、私は聴いていますよといいながら、きちんと集中して聴くことがどれだけありますか?ちゃんと聴いていると言う人を良く観察するとCDの解説を読んでしまっていたりする。対訳を読むのは良いけど、対訳だとしても読むのが許されるのは現在音楽が流れている部分だけで、他の部分の対訳を読み出すともう本当には音楽は聞こえてこない。
固いことを言うなと言うかもしれないが、私もそういうながら聞きをしていてある日はっと気が付いた。クラシックの音楽は完全集中して聞かないと意味がないと。しかしね、完全集中でCDを聞くのは、やはり難しいことなのだ。
ところが映像付き録音を聞くとこれは完全音楽集中が簡単にできる。私は今の生活パターンで完全集中でCDを聞く自信がない。映像付きのオペラが好きだと言う所以である。
超貴重なカルロス・クライバーの映像つきオペラ
その好きな映像付きオペラでカルロス・クライバーのものと言うと超貴重なのである。
クライバーの映像付きオペラ正規盤は3つしかない
さて、ここで説明が必要だ。クライバーの正規盤で発売されている映像付きオペラは3つしかない。こうもり、ばらの騎士、カルメンだ。
こうもりはヨハンシュトラウスのオペレッタであるが、これは昔から発売されていた。カルメンは国立歌劇場の実況中継で長くお蔵入りのものだったが晩年仕事をぜんぜんしないので、おそらく金に困ったクライバーが発売を許可した。
ばらの騎士はこれはもう最晩年の演奏で長いブランクの後クライバーがウィーン国立歌劇場に出てきたときのもので、この公演に行った評論家はシュターツオーパが長く経験できなかった真のオペラの夕べを昨晩体験できたという意味のことを言った。あるブローカーがなんとクライバーに10億円払ってこのばらの騎士の日本公演を実現させ、わたしはその時の全6回の公演に行くことができた。なにしろ10億円がかかっているのでクライバーは一度もキャンセルをしないでくれた。金ができると働かないクライバーはこの後事実上引退する。
クライバーの映像付きオペラ「オテロ」海賊盤を手に入れるまでの長い話
さて正規盤以外のクライバーの映像付きオペラについては説明が必要だ。まず1976年12月7日にスカラ座でのオテロ。オペラで特別な日と言えばこの日だろう。オテロをプラシド・ドミンゴ、デズデモーナをミレッラ・フレーニー、イアーゴをピエロ・カプッチルリ。ものすごいエネルギーの演奏で奇跡の日と言える。
良く知らないがこの日の公演はテレビ中継されたらしい。しかしおそらく再放送はない契約。
家庭用ビデオコーダーを持っている人がいたとしても恐らくオープンリール。音はオープンデッキかなにかでかなり良い音質で残した人がわりといたのではないか。とにかく30年ほど前、突然タワーレコードでこのVHSビデオが売りに出された。権利関係で言えばほとんど海賊盤のはずである。私はあわてて買ったがいかんせん音質が悪すぎた。映像はあるがとても楽しめるレベルではない。
ところがCDの海賊盤があるといううわさを聞きそれを手に入れたら、なかなかすばらしい音質。クライバーのことなら労を惜しまないわたしは、映像はVHS、音声はCDでというオテロ鑑賞をしてそのすばらしさに酔った。しかしもちろん音と映像はすぐずれるのでストップしたり早送りしたりこれは非常に大変だった。
そこで救世主が現れた。ネット上でこの映像と良好な音声をドッキングしたDVDを作り、ないしょで販売している人をみつけたのだ。以上でなぜクライバーのオテロを持っているかの説明を終わる。
ラ・ボエームも同じだ。同じ人がネットで音声良好なDVDを売ってくれていた。これはバージョンがいくつかあってスカラ座公演と日本公演のもの。しらべないとどっちがどっちか今忘れたが、すべてでミミがフレーニー、ロドルフォがペーター・ドボルスキーとルチアーノ・パヴァロッティだ。フレーニーのミミは喉がまるで楽器の様に鳴ってもう最高だ。ラ・ボエームの説明を終わる。
クライバーの正規盤のCDと他の指揮者による映像を強引にくっつけた盤
トリスタンとイゾルデと魔弾の射手、そして椿姫はちょっと特殊だ。この3つのオペラはクライバーの正規盤のCDが存在する。それを音源に適当な映像付きオペラと強引にカップリングさせたものを持っている。だから映像はクライバーとは関係ない。これをある技術者に依頼するときは「音源は絶対いじるな。しかしシンクロさせるために映像はいくらいじってもよい」
そんな変なものと思うかもしれないが、これ最高なんだ。
椿姫とカップリングさせたものはフランコ・ゼフィレッリ監督の映画「椿姫」。師匠のヴィスコンティ譲りの豪華絢爛が椿姫にピッタリでその映像の中でクライバーのわくわく椿姫が鳴り響くんだからもうたまらない。
おまけにこのクライバーの録音の中でヴィオレッタを歌っているイレアナ・コトルバスの生ヴィオレッタを私は実際に見ているので余計感情移入できる。
止まらないおたく独り語り
ところで、この一連の椿姫の話題の中で昔聞いたフィオレンティーナ・ファブリッチーニが話題に出たのでまた聞きたくなったが調べると廃盤になっている。しかしメルカリで無事取り寄せることができた。聞くのが楽しみだ。
それからわたし一押しのクライドボーンの椿姫でおもしろいシーンを見つけた。
1幕で客たちが帰るときヴィオレッタママがみなさんをお見送りするシーンだ。この演出は言ったように臨場感が満点なのでまるで客が本当に帰るときのような光景を見せてくれる。そこで最後にフローラがヴィオレッタにたいへんな権幕で文句を言っている。
つまりこういうことだ。フローラはせっかく自分の客を引き連れてヴィオレッタの夜会に来てやったのに、そのヴィオレッタは若い男に夢中になって話し込んでしまった。客はみんなヴィオレッタに優しいから
「あれあれまたママのわがままが始まったよ。はっはっ」
としょうがないなと許しているんだけど、フローラは最後にヴィオレッタにあんたなってないわよと文句のひとつも言いたくなるというわけだ。
緻密だよね。この演出。
ケゾえもん
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