宇宙の運命2
(文=ケゾえもん)
写真はハッブル・ディープ・フィールドとよばれている銀河の写真である。
写っているのはすべて銀河で星はひとつもない。
天文学者たちから出された企画による使用予約のスケジュールでぎっちりのハッブル宇宙望遠鏡を宇宙の何も見えない領域に向けて100時間もかけて写真を撮ったらこれが見えた、と一口に言えばそういうことになる。我々は無数の銀河に囲まれた宇宙にいるのだ。ロマンがあると思わないか?
そのことをガールフレンドに話すとハッブル宇宙望遠鏡のスケジュールがぎっちりと聞いて彼女の頭が反応した。彼女が口走ったことを聞いて私は彼女が考えていることがわかった。
彼女の頭の中に分け入ってみよう。
「すいません、7時から予約した、〇〇大学の大学院生チームですけど」
「はい、はい。ではもう空いてますからコントロールルームに入っていいですよ。自動販売機はその廊下の先にありますけど、コントロールルームでは飲み食い禁止ですからね」
「はーい」
「あと、エアコンの調子が悪くてエラーが出て止まることがありますが、一度スイッチを切って10秒ほど待ってまた入れると動くようになりますから」
「わかりました」
「それから料金は7時半以降はここ誰もいなくなっちゃうんで、このポストに入れておいてください。8時半から別のチームが入りますから8時20分には支度して出る様にしてくださいね」
「大丈夫でーす」
「それからWi-Fi使えます。これパスワード。コネクトするとNASAのホームページに入りますから登録すると使えるようになります」
「ありがとうございます」
「よーしみんな観測しちゃおぜ」
コントロールバーを動かす。
モニターに天体が写し出されている。
「もうちょい、右 あっそそれでOK」
カシャ、カチャ (シャッター音)
「おい、それも撮っておこうぜ」
カシャ、カシャ。
な、わけないだろうが。
各チームは企画書を提出し、その企画書に従ってNASAのオペレーターがその座標にハッブルを向け所定の観測をして後日データーがチームに渡されるんだ。各チームがドヤドヤとオペレーションルームに入ってきて自由に操作してどうする?貸しダンススタジオじゃないっつうの。
いずれにしろ、ハッブル宇宙望遠鏡の使用時間というのは貴重なもので、このハッブル・ディープ・フィールドプロジェクトの前に何が撮れるかわからなかったのに前述の様に100時間もの露光時間を必要とする観測をするというのは、賭けだったみたいだ。
ハッブル宇宙望遠鏡の視野はとても狭く、100メーター先においたテニスボールの大きさらしいが、その視野の中に(写真は合成されるからその視野とは限らないが)数1000もの銀河が写っていた。
中にはビッグバンのわずか3億8000万年後に形成されたと判断される銀河もあった。
ちなみに宇宙の年齢はなんと有効数字4桁までわかっていて137.99(±0.21)億年と算出されている。
NASAはハッブル・ディープ・フィールドの成功に気を良くして
ハッブル・ディープ・フィールド・サウス
ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド
ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド
などの写真が撮られた。
ところで宇宙の運命と言ってもいろいろある。
たとえば10の34乗年後には原子を作っている陽子さえ崩壊してしまい、物質さえもなくなってしまう。
もっと先ではホーキング放射によりブラックホールさえ蒸発して放射だけ(たぶん光子と電子)になってしまう。
これは10の100乗年後を予定しているらしいが。
いくらなんでもそんなに先のことを私は心配しているのではない。
私が心配しているのは、わずか1兆年後のことである。
1兆年というのは、そんな先のことではない。
私はこういう数字を考えるとき強引にお金に換算してみることがある。
お金は身近なものだから、スケール感がよくわかるのだ。
私は運よくお金もちの親戚から多額の遺産を受け継いだ。
その金額は137億円。私も遺産ばかりにたよらず自分でも働いて生涯年収は2億円だった。私の孫は先月アルバイトしてお金を生まれて初めてかせいだ。金額は5万円だそうだ。
私の資産は137億円だが、世の中に上がいるものでジェフ・ベゾフと言う人はアマゾンで儲けて資産1兆円だそうだ。
私も何か事業をして1兆円稼げるようになりたい。
(137憶年:宇宙の年齢 2億年:恐竜が繁栄した期間
5万年:ホモサピエンスが生まれてからいままで)
つまり、何が言いたいかというと10の34乗年ではもはや理解の外だけど、1兆年未来というのは自分に関係あることと感じて良い数字だと言うことなのである。
(続く)
2020年9月16日、ケゾえもん記