こどもの時間感覚

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息子は4歳になって、やっと「あした」がわかるようになりました。
3歳までは、「今より先の未来」といえば、それが三日後だとか、3時間後だということを把握できず、3分後に起こることを期待していて、たとえば午後、友達が訪ねてくる日の朝、「今日は、お友達が来るよ。」と言ってしまおうものなら、実際に友達が来るまで、「なんでまだ来ないの?」を数時間の間、何百回でも言い続けていたのです。他の同じ年齢の男の子も似たようなもので、息子の友達のお母さんが、わたしにこっそり、「明日から家族旅行でムーミンランドに行くの。息子にはまだ話してないけどね。言ったらタイヘンなことになるから。」などと言ったりしていたものでした。

「あした」の概念を知ると、こんどは、そこで何が起こるかも知りたくなります。しばらくの間、「あしたは何するの?」という質問攻撃に遭いました。それに答えただけでは終わりません。「あしたのあした(つまりあさって)は何するの?」「あしたのあしたのあしたは何するの?」「あしたのあしたのあしたのあしたは・・・。」と、こちらがつきあいきれなくなるまで聞くのです。

過去の方も、しばらくは、3分前のことも三日前のことも「さっき」という言い方でいっしょくたにしていましたが、「さっき」が「少し前の過去」ということがわかるようになって、「ずっと前」という語彙も増えました。
今だにそれ以上の言語化はできないものの、自分の小さい頃の写真を見たがったり、自分が赤ちゃんのときどうだったかを聞きたがったりしながら、「今」が過去からつながっていることを理解しています。

こうして、「今」しかなかったこどもの世界に、次第に未来と過去が加わってくるんだな、ふむふむと思っていたところに、「えっ?」という発見がありました。

息子は、「4歳の次には5歳になる。」「だんだん大きくなる。」「冬が来る」・・・という未来方向のベクトルだけでなく、「いつかまた赤ちゃんになる。」「小さくなる。」という、過去へさかのぼっていくベクトルも信じているのです。

「このおもちゃはふたつあるから、ひとつあげようね。」と言うと応じる息子が、「このおもちゃは赤ちゃんのだから、あげようね。」と言うと、「だめ。」と言います。「ぼくが赤ちゃんになったとき、また使うから。」と。

時間をさかのぼっていくという発想が、おとなにとっては、たんなるSFやファンタジーでも、こどもにとってはそうではない、というのは面白いと思います。

ママも小さくなると思っているようで、「ママが赤ちゃんになったら、ボクが抱っこしてあげるね。」などと言います。

夏にはこんなことがありました。

森でブルーベリーを摘んでいたときのこと。息子が手にもっていた容器をうっかり落としてしまい、それまでにふたりで摘んだたくさんのブルーベリーが全部、茂みの中にばらまかれてしまいました。息子に持たせていたという自分の失敗がくやまれて、わたしは大きな落胆を隠せず、「あーあ。」とためいきをついたまま、その場に茫然と立ちつくしていました。「ごめんなさいって言ってるのに・・・。」と、しょんぼりとつぶやいている息子には目もくれずにいたのです。そのとき息子が言ったセリフが印象に残っています。

「ママがちっちゃくなったとき、ママがブルーベリーを落としちゃったら、ボクも怒っちゃうよ。(それでもいいの?)」

※追記
ここで書いた、「時間をさかのぼる」という、こどものファンタジー的現実感は、短期間で消失しました。

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